上野医院

矢田建築設計事務所のスタッフとして初めて担当した想い出深い医院建築
 

 

 

建 築 主    個人

延床面積     511㎡

規模・構造   鉄筋コンクリート造 2階建

竣    工    1970年 

 

 

 施主の上野先生ご一家とは、建築だけでなくいろいろなお話をした事を今でも昨日のように想い出します。

 上野医院は北山山脈を背に、南面は広大な出雲平野が広がる風光明媚な山裾にある。かつてこの平野の庄屋として権力の象徴であった大木(曲がり松)は、近郊から上野医院の代名詞として親しまれ、健康管理のシンボルとして地域住民の心のよりどころとなっている。

 私たちは半年の基本計画を通して、院長と十分に話し合う機会に恵まれた。産婦人科の専門医でありながら、自ら家庭医を名乗り、この地域の住民の福祉を願う院長の心意気と人間性にふれるにつけ、我々の構想基盤は固められた。それは「病院らしくない病院」をつくることであった。すなわち病院特有の消毒臭と冷淡な空間を否定し、人間の空間を造り上げることである。精神的に弱く、不安な状態にある患者にとって、医師中心の医療や設備優先は避けなければならない。

 

 この建物の特徴は煉瓦貼りの壁にあるが、これは我々のこの建築に対する思いやりを満足させるものとなった。それは患者にとって頼れる壁そして、暖かく迎え入れられるばかりでなく、健康で素朴な外部環境に溶け込み、また強力な演出要素となり、町民から大木(曲がり松)とともに、新しいシンボルとして認識されつつあるからである。